日本語話者が英語を話すことの難しさ
私も多分にもれず、中高の6年間も英語教育を受けていたにも関わらず全然英語を話せない種類の人間なのですが。
最近仕事で英語で会話する機会が増えて、その度になかなか話したいことの英語表現がスッと出てこないので、自分なりに原因を考えてみました。
日本語が母語の場合の頭の中
私の場合、日本語で何か伝えたいことが出てきた場合に、以下のプロセスを通して口から言葉が出てきている気がしています。
1 の段階では「何となく」しか話したいことが浮かんでいません。
言葉にしてみないと整理できていなかったりする支離滅裂なこともあったりします。
抽象概念的な何か。
2 の段階でようやく言語化していて、この段階で、抽象概念的な何かが言葉になります。
さて、英語で話す場合は、抽象概念的な何かを言語化するプロセスでいろいろなことが起こります。
- 話したいことがもやっと頭に浮かぶ(非言語)
- 言語化する必要のある部分だけ言語化する。日本語で思考するパスと英語で思考するパスがある
- 日本語の語彙に当てはめる(英語より正確性が高い)
- それから英語に直訳する(遅い)
- 英語の語彙に当てはめる(語彙が足りないので正確性が低い)
- 翻訳の必要がないのですぐに発話のプロセスへ
- 日本語の語彙に当てはめる(英語より正確性が高い)
- 二つのパスを統合
- 英語で発話する
あくまで私の場合ですが、英語で直に発話できる場合と、英語に該当する語彙がない・日本語の方で先に概念に該当する語彙を見つけてしまったなどの原因で和英翻訳をかける必要がある場合の二つがあります。
あれです、CPUのエミュレーションをせずネイティブで動いている場合と、CPUエミュレーションしているみたいな違いです。
とすると、スッと英語で話せるようにするには、エミュレーションなしで話せるようになればいい訳です。
英語に該当する語彙が見つからないケース
当然ただ単に語彙が不足していることもあるのですが、普段の日本語での思考の癖が足を引っ張っているケースが少なからずあることに気づきました。
例えば上司が部下に「それ、なんとかしておいて」と言うみたいな、超抽象的なことを伝えたい時。
日本語でもぼんやりしすぎなので明らかにいいコミュニケーションの仕方とは言えない伝え方ですが、まあ例なので・・・
英語でこれと同じことを伝えようと思ったら、私はけっこう骨が折れます。
"Please process it in something good way." とかでしょうか?
こう訳すだけでも、「なんとかする」の翻訳はちょっと考え込んでしまいました。
なぜなら、以下のような、言葉の解像度を上げると言うか、具体化するというか、そういったプロセスが必要だったためです。
- (元の言葉)なんとかする
- (一度抽象的な何かに落として)「こなす」「処理する」「良いように」「方法は問わない」的なもやっとした何か
- (具体度上げる)"Process" "best way" "something good way"
- (「bestってほどじゃないんだよなー」など、具体度上げながら抽象的なものとの整合性をとる) "process it" "something good way"
- (ちゃんと文章の形に仕上げる) "Please process it in something good way."
この間3〜4秒程度でしたが、会話だとちょっと「間が開いた」と思われるには十分な時間がかかっているわけです。
抽象的な概念から直に英語の表現が出てくれば問題ないのですが、問題は日本語で「なんとかする」という語彙を先に閃いてしまった場合。
「なんとかする」に直接的に対応する英語の語彙を私は知らなかったので、どうしても日本語の便利な語彙「する」に頼りがちです。
そして一度「する」という語彙に落ちてしまうと、英訳が非常に難しくなります。なぜなら "do" と同じような概念の言葉ではないから。
もちろん「する」だけではないですが、日本語って曖昧で、普段の会話の範囲だけで考えを言語化しようとすると、英語に落とし込むためには具体度が低すぎる考え方になってしまいがちで、すぐに考えが英語にならないのが一因にあるのでは、と思いました。
日本語話者が英語を話せるようになるには
- 日本語でも抽象度が高いまま話さず、具体的に話す(動詞だけでなく、副詞、形容詞も)
- 英語の語彙をたくさん身につける
というようなことが必要なのではないでしょうか。
多分、普段から文章をたくさん書いている人とかは、文語体で考える癖がついていて、文の構成要素が具体的になりやすくて英語で話しやすい、とかあったりするのかしら。