若き経営者が語る【教育×ITの未来】 に参加してきた
去る9月25日に、SHAKE100主催の
に参加してきました。遅ればせながら、どんなことを学んだのかを書き出して、自分の意見の整理をしたいと思います。
参加者
- モデレーター
- デジタルハリウッド大学大学院 佐藤さん
- パネラー
- レアジョブ 加藤さん
- スクー 森さん
- Loupe(SENSEI NOTE) 浅谷さん
- ファンタムスティック シェインさん
- CA Tech Kids 上野さん
教育×ITの未来
EdTechという潮流があるそうです。
言葉自体は見ての通り、 Education と Technology をかけた造語です。
「100年前の医師は現代で治療を行えないが、100年前の教師は現代でも教壇に立つことができる」
という揶揄があるくらいに、教育というものは時代の流れに乗る事もなしに、時代遅れになっている、というのです。
そこですでにアメリカでは、
のような、ITを使った教育の革新(となるかも知れない)事例が登場して、従来の教育に異を唱えているそうです。
EdTechが「来る」3つの理由
1. お金
教育費はどんどん高くなり、子供一人当たり2000万円もの費用がかかるとのこと。
一方で学習塾は少子化にも関わらず収益は高止まり。
教育に糸目をかけない人も多いそうです。
EdTechは、低所得者に対しては低価格で教育の機会を与え、高所得者に対しては質の高い(もしくは貴重な)教育の機会を与えるだろうとのこと。
2. 継続的な学び
ドットインストールやSTUDYPLUSのを使って目覚ましい成長をしたユーザーは、元々は勉強熱心な性格ではなかったそうです。
ではなぜ目覚ましい成果を上げる事ができたのかと言うと、
自分の学習過程を、周りの人に認めてもらえる事が嬉しいから続けられた
そうなのです。
EdTechは、こうした継続的な学習のきっかけになるだろうとのこと。
3. 優秀な人が集まる
現代の教育が時代遅れであると考える人は多いらしく、IT業界の地位や名誉ある人々がKHAN Academy (NPO)に参加したりしているそうです。それだけ共感されやすく、またイノベーションの種が見つかりやすそうな話題であるということでしょうか。
パネルディスカッション
1. なぜこの事業を始めたのか
- 加藤さん
- 自分が欲しかったから
- 頭は良いのに仕事が無い海外学生の可能性を広げたかったから
- 森さん
- 浅谷さん
- 教師になった元同級生の力になれないかと思っていた
- Startup Weekendで優勝したのでそのまま立ち上げた
- シェインさん
- タブレット端末は子供・老人でも使える
- 自分の子供と遠隔でコミュニケーションを取りたかった
- 上野さん
- 世の中が「プログラミングは出来ておくべき」という流れになっている
- 子供にプログラミングを教える事で表現手段を増やすことができる
2. これからの業界動向と事業性について
- 加藤さん
- 英会話市場は8000億円
- ウリが「低価格」ではその内立ち行かなくなる
- 「オンラインだから学習がはかどる」を価値にしたい
- 森さん
- 収益モデルはフリーミアム
- リアルな学びをインターネットにリプレースしたい
- 浅谷さん
- 役割は変わっても「学校の先生」という職は無くならないと思っている
- 先生方を対象にサブスクリプションモデルでやっている
- Teachers pay Teachers のモデルはやらない
- シェーンさん
- 幼児向けアプリ市場は玩具市場とは食い合わないと思っている
- 二ヶ月で5万ダウンロードあったので、それなりの需要は見込んでいる
- 有料アプリ
- 上野さん
- プログラミング体験イベント(3〜4万円/月)とスクール(月謝)の二本立て
- Life is Tech とのジョイントベンチャーなので、教えられる人は100人ほどいる
3. 自分の子供にさせたい教育は?
- 加藤さん
- 優秀な学習者が集まる場に行かせたい
- 森さん
- 自分とは離して育てたい
- 女性の凄さを知れるところで育てたい
- 浅谷さん
- 失敗したときにどうなるのかを学ばせたい
- シェーンさん
- リスクを取る生き方をしても良い、ということを教えたい
- 上野さん
- 本人が希望したときに、その機会を作ってあげたい
ここまで、聞いて来たお話でした。
ここから、菊池が学んだことと意見をまとめます。
学び
これらの企業がローンチしたのはつい最近のことです。間違いなく、流れは来ている、と言って良いと思います。
また、印象深かったことが二つありましたので紹介します。
1. 全員、向きが違う
第一の印象は、「向いている方向はみんなバラバラなのだな」でした。
アプローチはもちろんの事、問題としていることが人(会社)によってかなり異なっています。
例えば、その企業が目指す方針について。パネルトークの中ではっきりと言及されていた目標は以下の二つでしたが、
- レアジョブ
- 日本人一千万人が英語を話せるようにする
- スクー
- 「人という存在」をオンライン化する
これだけでもかなりの違いがあります。残る企業にしても、はっきりとは分かりませんが目標を言葉にするとしたら、
- LOUPE
- より良い教育者を増やす
- ファンタムスティック
- よりクリエイティブな人を育てる
- CA Tech Kids
- ものを作る力を備えた人を育てる
こんな感じでしょうか。
なぜこれだけの違いが生じているのか。考えられる原因は二つ。
- 業界として、人間社会として、目指すべき教育の姿がまだわからないから
- どんな目標に突き進んでもなにかしらに当たるから
1. は、「必ずどこかに正解がある」とする考えです。
もうしばらく時間が経てば「流行の方向」というか、「何となくこちらが正しそう」という方向が見えてくるのではないかと思います。それまでの間に、様々な人が様々な試行錯誤を繰り返す必要があります。
しかし、これまでの教育もそうして「何となくこちらが正しそう」でやってきて、今の袋小路にはまっているのですよね……
2. は、「人と人とのぶつかり合いに正解は無い」とする考えと、「『教育』というラベルがついた範囲は広い」とする考えです。
「人と人とのぶつかり合い〜」と考えるなら、それは至極ごもっとも。
いくらITで教育のオーダーメイド化が進んだとしても、何かしら肌に合わないものは出てくる可能性があります。あるサービスがカバーしきれないタイプの人を、別のサービスがカバーして…ということが起きているのではないでしょうか。
「『教育』というラベル〜」と考えるなら、それも頷けます。
この場合は、個人的には『学習』の方が本質を突いた表現ではないかと思います。
赤ちゃんが言葉を発することができるようになるのも『学習』ですし、ご老人が退職後に水彩画に挑戦して描けるようになるも『学習』です。
『成長』と言っても良いのかも知れません。ニッチのものまで含めれば、需要はいくらでもありそうです。
2. 教えるのも人、教えられるのも人
第二の印象は、「結局は人なのだな」でした。
教育の持つ側面、というものが二つあると感じています。
- 知識の伝承
- 自己実現の補助
1. を満たすだけなら、機械に記録させておけば良いのです。
こちらの側面しか見ていないと、「教材のIT化」に終始し、教育のIT化を実現しようとすると、「教室に新しい玩具が来た」だけの結果に終わるのではないかと思います。
2. までを満たそうとすると、どうしても人が必要になります。
自己実現のプロセスには様々なモデルがありますが、
- 目標の設定(なりたい姿をイメージする)
- 現実の認識(今の姿をはっきりさせておく)
- 改善の実行(目標と現実のギャップを埋める)
という流れが一般的なのではないでしょうか。
目標探しというワクワクする作業を笑顔で手伝い、
今の姿をはっきりさせておくという辛い作業を投げ出さないように支え、
ギャップを埋めるのを親身になって励ます。
今後十年くらいは、まだコンピューターにこの作業をやらせるのは無理なのではないかと思います。
結論
- EdTechの流れは日本にも来ている
- まだまだ教育分野には進出できるだけの隙間がある
- 自己実現を助けてこそ、有益なものになる?
教育について、ビジネスチャンスはまだまだあると思いました。
菊池も色々と思うところがあるので、興味がありましたらご一報ください。